2019/09/30

2019年度「バヌアツ視察」報告記(2)エスピリトゥサント島編

((1)エファテ島編はこちら

エスピリトゥサント島で最大の街、ルーガンビルから北へ20㎞足らずのファナフォ村。ヘルスセンターでは、ソーラー保冷庫が故障しているため、保冷庫に必要なだけ最小限のワクチンをキープして、無くなったら、悪路を車で45分かけてルーガンビルまでワクチンを取りに行く。ようやく9月に修理してもらえることになったが、修理の専門家が一人しかいないため、もう半年以上も修理待ちの状態が続いているといいます。

一方、西へ30㎞程、でこぼこだらけの悪路を1時間余りかけて辿り着いたブールスエペ。ヘルスセンター管轄下のさらに小さな「ディスペンサリー」と呼ばれる診療所。深い森の緑に包まれた施設で、周辺にある10余りの村、人口3000人余のエリアをカバーする看護師、ケレン・クアイさん(30歳)は、独自に毎週木曜、母と子供のプログラムを開いてワクチン接種、子供の健康管理を訴え続ける一方、毎週、片道5時間を歩いて、点在する子供のいる家々を訪ねるのが、彼女の日課だという。

私達が訪れた日も、歩いて2時間かけて、ワクチンの接種に来たという親子がいました。電気事情も不十分で、電波も届かずスマホもない生活。そんな中では、病気や出産の事実も“うわさ”から耳に入ってくるのだとか。お互いを思いやり、声を掛け合うことで成立する、人々の原則的で人間的な関係がそこにありましたが、それだけに、ワクチン接種に限らず、健康、医療を維持することがいかに困難なことであるのか、改めて実感させられました。

ただ、安心できたし、嬉しかったのは、JCVの支援で設置された冷蔵庫や保冷庫がしっかりと現場で活躍してくれ、JCVの存在がワクチン接種を支えていることを、看護師はもちろん、村の人々も知っていてくれたこと。はるかに離れた日本の支援者の皆さんのお志が、しっかりとバヌアツにも根付いてくれていた。9年に渡る、私達、JCVの活動の意義を確認できたこと、“継続”が何よりも重要であることを、改めて知ることができたのが、今回のバヌアツ視察の何よりの収穫でした。

バヌアツには昨年、2018年、日本大使館が開設されました。今回の視察では、勝又晴美大使に面会の機会をいただきました。日本との関係は過去、特筆すべきものも少なかったようですが、近年は日本としても関係を強化しているとのこと。道路、電力をはじめインフラがまだまだ未整備で、病人の搬送に支障が出たり、中には、病院ににまで来られないケースもしばしば。病院の整備も重要だが、特に地方部では、看護士の数自体が不足で、遠隔地への巡回の手段やサービスも不足しており、まだまだ支援が必要とお話しされていました。

また、日本からの支援活動に関し、青年海外協力隊の活動が活発で、特に保健分野での協力が大きく寄与しているとのこと。そんな中で今回、「JCVの皆さんが、大変有意義な活動をされていることを改めて認識しました」とのお言葉をいただきました。バヌアツの医療事情はまだ多くの課題が残されているが、現地の医療関係者は懸命に取り組んでおり、日本国大使館もJICAやユニセフ等の国際機関とも連携しつつ、協力を進めていくお考えとのこと。JCVに対しては、「今後も是非とも継続していただきたい」とエールを頂戴しました。

こうして、今回のバヌアツ視察は滞りなく終了し、一行はオーストラリアのシドニー経由で20時間近くの長旅を経て、9月8日(日)、早朝、予定通りに帰国しました。参加された6名の支援者の皆様からは、「当初、これまでのミャンマーやブータンに比べると、ワクチン接種に来る親子の数が少ないと感じたが、視察を進め、現地の声を聞いていくにつれ、ワクチン接種を実行して、地域に浸透させるにも、これまでの国以上に状況が困難なことがようやく理解できた。現実を直視することができて、非常に有意義な視察になった」といった感想が聞かれました。

JCV事務局は今回、現地での「動画」の収録に力を入れました。私達のワクチンがどのような経路をたどって地方の村に届けられるのか。どれだけ容易ならざることなのか。しかし、それが、どれだけ現地に暮らす人たちの役に立っているのか、喜んでもらえているのか。「動画」をもって、少しでも支援者の皆様にお伝えしたいと思っております。

JCVのホームページやFacebookなどにも掲載していきます。さらに今後は、新しい告知・プロモーション活動にも今回の「動画」を活用して、支援者の皆様のお志、JCVの活動を、さらに広く日本人の皆さんにお伝えしていきたいと考えております。

来年、2020年は、ミャンマー、ラオスへの視察訪問を計画したいと思っております。できるだけ早い段階で、日程を含めて計画を告知していきます。支援者の皆様には是非、ワクチン支援国視察へのご参加を検討してみていただきたいと思います。

支援者の皆様の常日頃からのお志とご協力に感謝致します。
ありがとうございます。

世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV)
常務理事 事務局長  奥寺憲穂

 

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