人口約28万人、南太平洋に浮かぶ小さな島国、バヌアツ共和国。83の島々が連なるこの国は近年、南国リゾートの地として密かな人気を集めていますが、国民の多くは手つかずの豊かな大自然の中で、昔ながらの自給自足に近い形で生活を営んでいる。
世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV)は今年、恒例のワクチン支援先視察の対象国をバヌアツとし、8月31日(土)〜9月8日(日)の日程で現地を訪問してきました。今回は、6人の支援者の皆さんが参加され、私達が届けるワクチンの接種の現場、保健医療関係機関や施設、さらには地方部の村の診療所などを訪ねて、バヌアツのワクチン接種の状況をつぶさに見て、その現実に直接、触れていただきました。
JCVが同国政府の要請を受けてワクチン支援を開始したのが2010年。以来9年、ワクチンやコールドチェーン機材を継続して届けてきました。そして、現地政府、保険関係機関、UNICEFなど関係者のたゆまぬ努力と協力により、バヌアツの子ども達へのワクチン接種は着実に浸透、感染症により命を落とす子どもは確実に少なくなってきています。
今回の視察では、首都ポートビラのあるエファテ島と、北部にある同国最大の島、エスピリトゥサント島を訪れました。
エファテ島では、バヌアツ保健省のEPI(予防接種拡大計画課)の案内で中央保冷庫を訪ね、ここから国内各地の島々、そして各村々の診療所へ届けていく流れ、2〜8℃の低温状態を維持するために、現地のスタッフがいかに工夫を凝らし、困難に立ち向かっているかを実地で見てきました。
その後、国立のビラ中央病院を訪問しました。ICU(集中治療室)も備えた国内最大の医療施設ですが、日本の病院の設備、環境とのあまりの違いに、支援者の皆さんも当初は驚きと戸惑いを覚えざるを得ませんでした。しかし、施設の改善、スタッフの教育に取り組み、常に環境向上に努めています。オーストラリアから派遣された女性看護師の指導を受けながら、「今、彼女達から一生懸命に学んでいるんだ」と話して研修に励んでいた救急救命隊の現地男性スタッフの姿もありました。そして、何より、治療中、入院中の患者をはじめ、付添いの家族の誰もがとても穏やかで、私達JCVの一行に対してもにこやかな表情を投げかけてくれたのが印象的でした。
どこの国でも、接種の基本は、拠点となる保健所や診療所での接種、投与ですが、居住地域が方々に点在し、交通の便も整わない地方部では、「アウトリーチ」と言って、看護師がそれぞれの村に出向いて接種を行います。中には、片道5時間以上も歩いていくケースもあるとのこと。
エファテ島ではポートビラ近郊のメレ村を訪ねました。ここは中心部から車で20分程に位置する比較的大きな規模の村でしたが、エスピリトゥサント島でのアウトリーチは全く様相が異なりました。((2)エスピリトゥサント島編につづく)
世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV)
常務理事 事務局長 奥寺憲穂