
日本国内の感染症予防に関して、嬉しいニュースが入ってきました。3月2日(月)、厚生労働省の専門家部会は、国産のMMRワクチンの製造販売を了承いたしました。この後、厚生労働大臣が承認すれば、国内で赤ちゃんが接種できるMMRワクチンが誕生することになります。
このワクチンが定期接種(指定期間内での無料接種)の対象となれば、おたふく風邪およびそれに伴う重篤な難聴などの後遺症から、多くの子ども達を守ることができるようになります。
はしか(measles)、おたふく風邪(mumps)、風疹(rubella)をまとめて予防することができるワクチンで、新三種混合ワクチンとも呼ばれます。JCV支援国を含め、世界では50年以上の長きにわたり、安全に使用が行われています。
一方、日本では1989年に使用が開始されたものの、成分に含まれていたおたふく風邪ウイルスが原因となり、無菌性髄膜炎が数千人に1人という割合で発生しました。そのため、小児用のワクチンは1993年に一度使用が中止。定期接種は、はしかと風疹のみを予防するMRワクチンに切り替えられ、おたふく風邪ワクチンは費用が掛かる任意接種となりました。
この時の原因は、世界的に主流として使用されるおたふく風邪のウイルス(Jeryl Lynn株など)ではなく、占部株という種類を使用したことだったと分析されています。この反省を踏まえ、今回の新たなワクチンでは、海外で長年主流として使用され、安全性が確認されているウイルスが使用され、治験や海外データにおいて、無菌性髄膜炎の発生頻度は極めて低く抑えられていると発表されています。

左:おたふく風邪を発症し、耳の下から顎にかけてが腫れ上がった子ども
右:おたふく風邪の原因となるムンプスウイルス
任意接種である影響もあり、日本のおたふく風邪ワクチンは接種率が40%程度と低く、世界でも稀なおたふく風邪の流行国となってしまっています。そのため、重篤な後遺症である「ムンプス難聴」に多くの人が苦しめられてきました。
〇ムンプス難聴
おたふく風邪のウイルスが引き起こす難聴です。両耳だけでなく、片耳のみに症状が見られるもあります。近年の調査により、おたふく風邪に感染した人のうち約1,000人に1人という高い割合で発症していることが判明しています(※1)。その多くは、15歳未満の子ども達です。
治療が難しく、いったん発症してしまうと聴力を取り戻すことは困難です。補聴器の使用のほか、人工内耳を埋め込む手術が必要になることもあります。
参考文献
※1:国立健康危機管理研究機構「小児科からみたムンプス難聴について」
MMRワクチンで予防できる感染症のうち、はしかと風疹については、日本はWHOの定める清浄国となっています。今回の国産MMRワクチンの製造販売が正式に承認されて定期接種の対象となれば、おたふく風邪の国内での撲滅、そして、後遺症に苦しむ子ども達が大幅に少なくなることが期待されます。
