今日12月4日（木）は「血清療法の日」です。1890年（明治23年）のこの日、北里柴三郎とエミール・ベーリングが連名で破傷風とジフテリアの血清療法の発見を「動物におけるジフテリア免疫と破傷風免疫の成立について」という論文で発表しました。この発見はジフテリアや破傷風のワクチン開発にもつながり、多くの人々の命を守ることにつながりました。

血清療法（抗血清）とは

馬などの動物に毒素を弱毒化あるいは無毒化して注射して毒素に対する抗体を作らせ、それを病気の治療に用いる治療法のことです。破傷風やジフテリアにかかってしまった人を救うため、今でも使われています。また、この治療法は、ヘビなどの毒に対しても用いられます。

ただし、血清は人体にとっては異物なので、アナフィラキシーショックなどのアレルギー反応に注意する必要があります。そのため、現在では、より多くの人に対して安全に使用でき、そもそも感染を予防できるワクチンの接種が多くの国で進んでいます。

北里柴三郎とエミール・ベーリングによる血清療法の発見

北里 柴三郎は、東京医学校（現：東京大学医学部）を卒業後、ドイツに留学し「細菌学の父」ロベルト・コッホ博士に師事します。そして1889年、当時不可能と言われていた破傷風菌の純粋培養に成功し、世界を驚かせました。

彼の同僚だったのが、エミール・ベーリングです。当時、死亡率が40%に達するなど猛威を振るっていたジフテリアを研究していた彼は、「感染しても死なない人がいるのは、血液中に殺菌を行う化学物質があるからではないか。それを見つけることができれば、多くの人の命を救えるぞ。」と考えていました。

折しも、北里も破傷風菌の治療において同じ結論にたどり着いていました。2人は共同で研究を進め、少しずつ毒素をマウスに注射していくと、死なない個体が出てくることを突き止めます。そして、生き残ったマウスから採取した血液を別のマウスに注射すると、そのようなマウスには、毒素の濃度を高めたものを注射しても死亡しないことを発見します。こうして、彼らは、毒素を中和する化学物質（免疫グロブリン）を見つけることについに成功したのです。

血清療法を基にした破傷風とジフテリアのワクチン開発

1890年、北里とベーリングは連名で「動物におけるジフテリア免疫と破傷風免疫の成立について」という論文を発表。さらに、1891年、ベーリングはそのデータも公表します。この成果により、ベーリングは第1回ノーベル生理学・医学賞を受賞しています（当時、共同受賞の制度がなかったため、北里は落選）。

また、1920年代にはいると、第一次世界大戦により各地で抗血清の需要が高まっていきました。その開発に関わっていたガストン・ラモンはが、抗血清の腐敗を防ぐ研究を行う中で、抗原性を保ったまま無毒化を行うことができることを発見。こうして、そもそも感染症のかからないようにするために、ジフテリアワクチンと破傷風ワクチンが生み出されました。

いかがでしたか？北里 柴三郎らが生み出した血清療法、そして、そこから発展した破傷風ワクチン、ジフテリアワクチンは、今日に至るまで、世界中で多くの人の命を守っているのです。

しかし、自力でワクチンを調達できない途上国は未だ数多くあり、たくさんの子ども達がワクチンを必要としています。私たちJCVは、途上国の子ども達にワクチンを贈る子どもワクチン支援活動を今後も続けてまいります。

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