国内での活動

JCVサポーター

進藤 奈邦子さん

皆さん、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザの話はよく耳にされていると思います。 WHO(世界保健機関)では、各国の政府や他の国連機関と協力して、インフルエンザパンデミック(世界的流行爆発)を未然に防ぐため、あるいは影響を最低限に抑えるため日々急ピッチで準備を進めているところです。

1918年「スペイン風邪」と呼ばれた人類史上最大、かつ最悪の新型インフルエンザでは、世界中で2000万から5000万人の人が亡くなったと言われています。第一次世界大戦に参戦したアメリカ兵からヨーロッパ中に急速に広がって行ったこのインフルエンザはスペインでも大流行し、参戦していなかったために情報規制が行われていなかったスペインではこのニュースが大々的に報道されたため、人々はこのインフルエンザを「スペイン風邪」と呼ぶようになったといわれています。その後もこの新手の微生物(ウイルス)は人から人へ感染し、世界中に運ばれてで、大きな災厄となってしまったと言われています。最近の研究では、とくに途上国での被害が大きかったことがわかりました。

今では、医学者たちがこのウイルスを捕らえ、分析し、これを使ったワクチンが製造できます。安全で関連死亡や重症化を予防するインフルエンザワクチンは多くの国でお年寄りや慢性疾患のために免疫力の弱まった人を中心に毎年の接種が勧められています。今世界を震撼させている鳥インフルエンザが人から人へ容易に感染するようになった時に、直ちにワクチン接種が開始できるよう、WHOと各国政府でこのワクチンの備蓄を進めています。

スペイン風邪の時代にはインフルエンザワクチンは存在しませんでした。ワクチンという人類の偉大な知恵の産物によって、次のパンデミックではこのような悲劇を繰り返さないよう、世界中で刻々と準備が整いつつあります。

豊かで平和な現代の日本では、どこの町でも、村でも自治体と保護者が保健所を軸に上手に連携して、必要なワクチンを必要なときに無償で接種することができるようになり、今や、はしかやポリオ、ジフテリア、百日咳などの6大感染症で亡くなる子どもは戦後間もなくにくらべ激減しました。だから、怖い感染症の事もいつの間にか忘れ去られて、それこそ地球上からも無くなった様に錯覚しているのが実情ではありませんか。どの病原体も完全に地球上から消えてしまったわけではなく、予防接種を中止するとまた牙をむき出しにして人類に襲いかかってきます。 新型インフルエンザ、鳥インフルエンザの登場で、人類は再び新たな感染死の脅威にさらされていることを認識せざるをえなくなりました。ひとたび世界的な大流行(パンデミック)が起これば、日本で65万人が亡くなるとの推計が公式に出されています。

平和で、健康な毎日を出来る限りたくさんの人々に暮らしてもらうため、WHOでは日夜努力を続けています。そして私も、微力ながら全力を尽くし、危険な病原体から地球の将来を支える世界の子どもたちを守っていきたいと思っています。また、個人として、大切なワクチンを世界の子どもに贈るJCVの活動を、WHOや国の力ではなかなか到達することのできない、きめ細かな、そして地元に根付いた息の長い活動として応援しています。

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進藤 奈邦子(しんどう なほこ)
WHO本部 グローバル インフルエンザ プログラム、メディカル・オフィサー
略歴平成2年東京慈恵会医科大学卒、医師、医学博士。専門は内科、感染症学。インフェクション・コントロールドクター。卒後英国セント・トーマス病院(ロンドン)およびラディクリフ病院(オックスフォード)にて外科、血管外科、脳神経外科臨床研修。東京慈恵会医科大学腎・高血圧内科および感染症内科医局員を経て平成10年より国立感染症研究所感染症情報センター リサーチ・レジデント。平成12年、同センター主任研究官。平成14年よりWHO(世界保健機関)に派遣、感染症アウトブレーク警戒対策、危険病原体に対する感染制御などの担当を経て現在に至る。
WHOでの主な活動トリ・インフルエンザの感染制御、治療・患者臨床管理、インフルエンザパンデミック対策にかかわる活動の他、他の大規模感染症アウトブレーク制圧活動に携わる。
<SARS> 初期情報収集、グローバルアラート作成、診断基準作成、患者検体のトレーシング、院内感染対策ガイドライン作成。シンガポールに派遣、SARS制圧に携わる。<インフルエンザ> 流行地域の住民に対する注意勧告、屠畜作業に関するガイドライン、院内感染対策ガイドライン、患者治療管理ガイドライン、パンデミック対策におけるコンセンサスドキュメント、迅速封じ込めプロトコルなどの作成。WHO世界パンデミック対策会議、パンデミック迅速封じ込め会議、H5N1感染患者治療管理指針決定会議などインフルエンザ関連会議の開催を担当。平成18年1月のトルコ、5月のインドネシアにおけるトリ・インフルエンザアウトブレークでは感染制御担当として現地に派遣。<その他のおもな活動> 平成17年、インド洋沖地震後の感染症の爆発的流行を阻止するため、WHO東南アジア事務局にて被災国における感染症サーベイランスを統括。史上最大規模のアンゴラにおけるウイルス性出血熱アウトブレークにおいて感染制御を担当。ハイテク情報技術を駆使したWHOのオペレーション中枢であるStrategic Health Operations Centreで国際健康危機管理の最前線に立つ。
資格日本内科学会認定内科医、日本感染症学会感染症認定医、ICD協議会認定インフェクションコントロールドクター、日本医師会認定産業医。
所属学会日本医師会、日本内科学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本公衆衛生学会、日本ウイルス学会、日本ワクチン学会、日本環境感染学会